国宝 阿修羅展に想う(7) 阿修羅像への照明
博物館、美術館での仏像は、寺院に安置されている状態と往々にして違います。寺院では仏像と私達の目線の高さが同じという事は、まずありません。仏像のほうが高いのが通例です。そのため、私は博物館ではしゃがんで目線の高さを調整して見ることが良くあります。
その点では、今回の阿修羅像の展示は適度の高さを持っていて、さらにグルっと廻れるという寺院で安置されていた状態では経験することのできないアングルから見れるという博物館ならではの恩恵がありました。(現実は興福寺の堂宇での安置ではなく国宝館での展示ですが)
照明という点から見ると、国宝展での阿修羅像は影をつくらないよう上下からのライティングでした。これは創建時での堂内での安置ではありえないライティングです。写真家・小川光三氏は〔阿修羅を究める=小学館刊〕で「阿修羅は群像の向かって左の最後列ににありましたから洞内の一番奥の、おそらくやや高い位置に置かれていたのでしょう」ということで、光はやや下方から当たることを想定した撮影もしています。この写真は芸術新潮3月号の阿修羅特集の75ページにも載っています。キリっとした引き締まったお顔です。おなじみの“まなざし”とは、異なった印象です。
どなたでも経験があるでしょうが、懐中電灯を顔の下から照らし、怖い顔を作った事に通じます。しかも堂内はうす暗く、明かりもゆらゆら揺れてお顔の陰影も揺れたことでしょう。小川氏がこのお顔が「阿修羅らしい」と述べていますが、卓見であり大いに共感できます。
「阿修羅像をLEDのライトで下方から照らしてみたい。」という気持ちが無くもありません。が、展覧会の会場に撮影禁止とかの注意と共に「展示は照明も含めて国際基準、出典者の意向に従っています。」として「ライトなどを当てることを禁止します。」と掲示されていました。毎回このような注意書きがあるのか?今回特別な注意なのか?今までは気付きませんでした。
国宝展の展示ではライティングの方向を変えて表情の変化を見る工夫があればよかったのにと思わずにはいられません。
ちなみにLEDは熱も紫外線も出さず対象物に対して優しい光で法隆寺でも使われています。
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