ラグビー秩父宮。満員
社会人ラグビーの決勝で秩父宮が満員になったのは、10年ぶりとのことだそうだ。カードは東芝対三洋だったと。これだけではどんな試合だったかピンと来なかったが、たまたまうちの嫁さんの魔手から逃れてかろうじて残っていたその当時の雑誌をパラッとめくって気づいた。「あの試合だったのだ!」
私の最も鮮烈に残っているラグビーのワンシーンに“ワタルチャンのノーホイッスルトライ”がある。秩父宮バックスタンド22メートル附近(伊藤忠側)の最前列で東芝を応援していたのだが、キックオフから、まだ1分もたっていないのに“ワタルチャン”がボールを持って目の前を駆け抜けていく。ワタルチャンとは村田亙選手(現ヤマハ)である。どうしてボールを持ってここを駆けていくんだろう?そのスピードと共にあまりのビッグプレーに事態を良くのみ込めていなかったことを今でもはっきりと憶えている。この試合、退場を命ぜられたセミィのとまどたったような悲しい表情。14人になってからの三洋の猛反撃。逆にリードを許す。しかし、三洋は力尽きた。ラトゥーの必死な踏ん張りがよみがえってきた。向井監督の「後半は50分戦うように」はまるで、昨日の試合に出た選手に言っているようだった。全ては10年前のこと。昨日は10年前と同じ22メートルラインより数メートルゴールライン側のバックスタンド最前列で応援していた。神宮球場側であったことをのぞけば10年前と同じである。そして10年後もおそらくは忘れることのないトライの目撃者となった。
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